新古今の景色(78)院政期(53)歌林苑(43)源通清~遁世した父の代詠

源通清は正四位下斎宮尞頭清雅の息子で保安4年(1123)に生まれで没年未詳。治承4年(1180)58才で五位蔵人に補され、従五位下。治承2年(1172)『広田社歌合』に出詠。『千載和歌集』初出、1首入集。

 

                   『千載和歌集』 巻第十七 雑歌中

           源清雅九月ばかり様(さま)変えて山寺に侍けるを、

                          人の問ひて侍けるを

          返事(かへりごと)せよと申侍りければ、よみてつかはしけるし

1148 思ひやれならはぬ山にすみぞめの 袖に露を(お)く秋のけしきを

     【想像してください。慣れない山寺に住み初めて、墨染めの袖に涙の

      露の置く秋の様子を】

 

この歌は父・清雅の出家を知って歌で問い合わせた知人への返歌を代詠せよとの父の要請に応えて詠ったもので、作者が父から遁世生活の心情を聞かされて詠んだのか、それとも、端からみた父の心情を推し量って詠ったのか、いずれにしても、世を捨てるのはそんなに簡単ではないことが窺える。