2021-01-01から1年間の記事一覧
大井川船に乗り得て渡るかな(残23) 西住付けけり 流れに棹をさす心地して 心に思ふことありて、かく付けなるべし と、ここで、船が岸を離れて西行と西住は空仁と別れるはずであった。 が、西行と西住の出家への思いを見抜いた空仁から、出家を促す意味を…
『千載和歌集』 巻第十七 雑歌中 題不知 1143 大井河となせの滝に身を投げて早くと人にいはせてしがな 【大堰川の戸無瀬の滝に投身して、あの人は早く世を捨てたと 人に言わせたいものだ】 上記は空仁法師(※1)の『千載和歌集』入集歌の一首であるが、…
ここでは、死後に『千載和歌集』に思いも掛けず多くの自作歌を採り入れてくれた撰者藤原俊成の夢に現れ、感涙で喜びを表現した道因を偲びながら、『千載和歌集』及び『新古今和歌集』から幾つか味わってみたい。 『千載和歌集』 巻第一 春歌上 花の歌とてよ…
道因がいくら藤原北家の出とはいえ、摂関政治が栄華を誇った時代は遠くに去り、今や天皇の父・上皇が実権を握り台頭著しい武士との連携で政権を運営する院政期にあって、藤原北家の支流のさらに支流の出の道因にとって、位階の昇進は到底望めず、従五位上止…
さて、無常の時代に歌への激しい執念を燃やして90余才まで生きた道因とは一体どのような人物であろうか。知られている略歴は次の通り。 道因の俗名は藤原敦頼。藤原北家の高藤の末裔で治部丞清孝の息子として寛治4年(1090)生に生まれ、没年未詳だが、治…
『無名抄』で鴨長明は、歌に命をかけて九十余才まで生きた老法師の凄まじい執念のありようを「63 道因歌に志深きこと」で見事に活写している。 【歌道への志の深さにおいては道因入道(※1)に並ぶ者はいません。入道は70~80歳になるまでは「どうか良…
さて、鴨長明・兼好法師という希代の識者を注目させた登連法師とは一体どのような人物であろうか、と、あれこれ調べてみたが、出自・系譜・生没年未詳で、判明したのは以下の事項。 ・治承2年(1178)頃は生存。中古六歌仙、歌林苑会衆の一人。家集『登連法…
次に登連法師の「ますほのすすき」の逸話についての兼好法師(※1)の視点を『徒然草~第百八十八段 』でみてみたい。 【一事を必ずなそうと思えば、他のことが駄目になることを惜しんではいけない。人の嘲りも恥じるべきではない。万事を犠牲にしなければ一…