(1)王権と女房
・律令国家の女房・女官は、天皇に近侍してその補助と装飾をつとめて天皇と不可分の存在であり、そのために高貴性を身に纏っていた。
・また、中世の女房・女官も王権と一体化し王権に密着した存在であった。
(2)「歌合」における女房歌人
・平安時代:
「歌合」はもともと平安前期に後宮女房たちが主体的に企画したことから始ま
り、男女共に参加して絢爛と風雅を競い合う宮廷の雅な行事であった。
そして、この時の女房は歌合の頭(とう)や講師(こうじ)を務め、晴儀
(せいぎ)の「歌合」にも大きく関与した。
また、男女対抗の「男・女房歌合」や、斎院・后宮・女院主催の歌合も盛ん
に催され、女房は歌合の主要な担い手であった。
・院政期以降:
「歌合」は和歌の理論的批評の場と変質し、院・天皇・摂関家その他の権門と
結びついた歌道家が歌壇を掌握したことで、「歌合」や「撰集」は公的文化の
中軸となり、身分と文化の秩序によって構造化されてゆく。
それに伴い「歌合」は完全に男達・権力者たちの手中に移り、女房が講師
(歌を読み上げる役)や、判者になることはなくなったが、それでも女房は
歌合に欠かせない存在であった。
引用文献 『異端の皇女と女房歌人』 田渕句美子著 角川選書、