新古今の景色(13)女房文学(6)清少納言のパトロンは道長か(2)

ところで、『枕草子 136段』では、

道長の猶子とも言われる源経房が、長い里居をしている清少納言を尋ねて、道長に追い詰められ厳しい暮らしに健気に耐える中宮定子と女房達の様子を語り、「こう言うときこそあなたがお側に仕えて支えるべきですよ」と次のように語る。

 

「私が右中将に昇進した喜びを報告するために中宮に伺候したところ、中宮を訪れる者の少ない、世間から見放された厳しい状況におかれているにも関わらず、女房達の装いは裳・唐衣の組み合わせに至るまで季節にぴったりで、皆、これまで通りのようにお仕えしていましたよ。

 

私が御簾の隙間から見たところでも、8~9人の女房達が朽葉の唐衣・薄色の裳に紫苑重ね・萩重ねの洒落た装いで並んでいました。

 

私が、前裁の秋草が余りにも繁茂しているのを見て、『何故、刈り取らせないのですか』と言ったところ、『中宮様が殊更に繁った葉の上の露をご覧になりたいと申すので』と宰相の君が答えられたのも、何とも風情のあることでした。

 

私に向かって女房達が口々に『少納言のお宿下がりが全く気がかりだわ。中宮様がこれほどの侘び住まいなさっている時こそ、少納言にどのような事情があろうとも、彼女ならきっとお側に居てくれるはずと、中宮様は心の中で思っていらっしゃるのに、何とも張り合いがない』と言っていたのは、私の口から貴方にお伝えしてほしいと言うことだと思いますよ。とにかく中宮様のところに参上されてはいかがですか」

と経房は清少納言の背中をやんわりと押している。

 

そんな、自分より5歳近く年下の貴公子の思いやりのある言葉に、清少納言が、「さあね、女房の方々が私を憎らしく思っていたので私も憎らしく思ったものですからね」と拗ねてみせても、「まあ、のんきな事を」と、応じるところに、経房のおおらかさが覗える。

 

参考文献:『新潮日本古典集成 枕草子 上』 萩谷 朴 校注