前回、女房には内裏女房、中宮女房、内親王(斉院・斉宮)女房等があると述べたが、しばしば摂関家及び受領階級などの家に仕える女房の他に、院政期には上皇・女院に仕える女房も生まれた。
そして、特に宮廷に仕える女房は現代における最先端のキャリアウーマンに匹敵し、彼女達の多くは中流貴族の娘たちであった。
次に女房についてざっくりと述べてみたい。
(1)女房の仕事
・主君の衣食住の世話
・秘書的な業務
主君と男性貴族たちとの間の取次や応対
主君への手紙などの受け取りや主君の代筆
主君の命を伝える女房奉書の執筆
・宮廷行事に関する業務
宮廷行事への参加、遊宴などの接待、行幸・行啓などの供奉
(2)女房の生活スタイル
女房の生活スタイルは身分や役割によって大きく異なるが、主君にとって重要な役割を担う女房は、宮中や御所などに局を与えられて主君の側近くで起居する事が多い。
(3)女房の区分(中宮女房の場合)
・公的女房:内待など
(4)女房の身分
女房の身分は上臈女房と中臈女房に分かれていた。
(5)女房の待遇
女房には朝廷からの給付はあっても華やかな宮廷生活を維持するほど充分ではなかった。例えば天皇に仕える内裏女房でさえも朝廷は彼女たちの生活を維持するほどの経済的な保証はしていなかった。
とりわけ華やかさと才知を競い、宮廷行事への参加も多い宮廷女房には衣装などの出費は甚大で、父・兄弟・夫・恋人などの後援・支援が不可欠であったが、その反面、宮廷女房を支援・後援すする側にとっては、彼女を通して様々な情報を入手して主君に有利な口添えをしてもらえるメリットがあった。
(6)女房の存在感
出世や有利な取り計らいを望む貴族にとっては、主君から深く信頼された女房や、主君に対して強い発言力を有する女房と親しい関係を築くことは、主君への取次を有利に運ぶ上で無視できない存在であった。
『枕草子絵:琵琶を挟んで対話する一条天皇と中宮定子の場面』日本の美術48号白描絵巻」至文堂より。
参考文献:『摂関期女房と文学』 諸井彩子 青簡舎
『日本の美術 №48 白描絵巻』(昭和45年5月15日発行) 至文堂